あいさつ


photograph SAITO Sadamu



「雨引の里と彫刻」は茨城県桜川市の旧大和村の里山や集落を舞台に、初回の1996年から作家が主催となり、地元の協力を得ながら運営してきた展覧会です。7人の石彫家により始まったこの展覧会も今や大所帯となり、毎月の全体会議では設置場所、コースの設定、その他諸々にいたるまで参加作家全員で話し合われ、一丸となって展覧会は周到に準備されます。
 前回展「雨引の里と彫刻2011」では、箔~のさなかに狽ニ題し、凛とした冷たい空気と彩度を落とした真冬の風景の中の展覧会を試みました。雪景色のスタートは真冬の開催にふさわしく、充実した作品の並ぶ展覧会ではありましたが、会期終了直前に東日本大震災のため展覧会は止むなく閉鎖。農業、石材産業を主とするこの地域にも震災の被害は及びました。幸い全42点の作品の倒壊はなく、この展覧会における作品の安全管理の高さを示しましたが、参加作家にとっては最後までやり遂げられなかった悔しさが残りました。
 さて、9回目の開催となった今回は、9月から11月にかけての2ヵ月間、秋の里山や集落の中に、参加作家38名の彫刻作品が設置されました。秋の爽やかな風や里山の美しさを体感しながら点在する作品群をオリエンテーリングのように巡る楽しさは、まさにこの展覧会の醍醐味です。リピーターの方々も多く、作家の解説付きのバスツアーも初日から予約が殺到する盛況ぶりでした。震災後の初めての展覧会として作品の安全性はもとより、地域との関わりも再検討しながら、準備を進めてきた展覧会です。ご高覧いただきました皆様へ、そしてご協力いただきました皆様へ、参加作家一同、心より感謝致します。

2013年12月
雨引の里と彫刻 2013 実行委員会