作家のひとこと

雨引の里と彫刻 2013 に参加した各作家の作品に対する思いや、制作に関して日頃考えている事、 雨引の里と彫刻に参加して感じた事など、それぞれの気持ちを綴った作家の一言です。


國安孝昌 / 雨引く里の竜神2013
丸太、陶ブロック、単管
心静かに雨引の里を巡って歩くと、風景のどこそこに地霊というべき聖なる空間を感じ見つけ出すことが出来る。2013 のこの場も私には雨引く精霊を感じる特別な場所である。場と私の制作が、願わくばひとつになって見えれば幸いである。

山上れい / Triangulated Flower
ステンレススチール
この池は第5回展でも作品が設置された。久しぶりに訪れると、水面は蓮で覆われ、景色はずいぶん変化していた。夏、蓮は天に向かって花を咲かせる。薄桃色の美しい花は清らかな光を放ち、この場を包む空気に輝きを与えていた。秋、もう一度この池に花を咲かせたい。

菅原二郎 / 内側のかたち-13PLS
石灰石
今回使った石は大理石よりもやわらかい素材のため、形をなるべく大きくとり、本来は細くしぼるべきところも素材の持つ強度とのかねあいの中、自分が感じる可能と思われるところまでとし、内側の曲面が持つ柔らかさの表現を重視した。

宮澤泉 / 夏空
花崗岩
蝉が鳴いている。私は手にノミとハンマーを持ち石を彫る。
ただひたすらに石を彫る。

戸田裕介 / 水土の門/天地を巡るもの
鉄、塗料、洋箔( 真鍮)、金箔
「水土(すいど)」とは、 近世まで、「自然環境」や「風土」などと同意義で使われた言葉ですが、ここでは「水」と「土」の意味です。水循環、物質循環、私たちを取り巻く世界では、様々なものがゆったりと、あるいは猛スピードで絶えず巡り続けています。

和田政幸 / しゃもじ

薄い鉄板で箱を作っています。今回は試行錯誤の結果、下の楕円は1.6mm 厚、上の楔状の棒は1.2mm 厚で作りました。見晴らしの良い場所を選びました。

佐藤晃 / Surface - 表層
花崗岩
なだらかに傾斜する丘から広がる田圃の緑は川面の様に揺れていた。流れの岸に連なる風を孕んだ森や竹林はまるで流動体の様であった。私はここに留まり呼応できる形を造りたいと思った。


塩谷良太 / 具合
陶、鉄線、シュロ縄、他
春先から草木が伸び行くのといっしょに粘土をつなげていった。草木は人々の記憶に重なりながらのびやかに成長し、期待どおりに季節を運ぶ。粘土は私の漠然とした予感と共に姿を変え、移り行く季節の中にしばし留まる。

松田文平 / 垂直と非垂直
黒御影石
振り下げた重りが地球の核に向かう軌道を絶対垂直線と定義し、変化する面に対してのそれを相対垂直線と定義した、基準になる物によってその絶対と相対は入れ替わる可能性が有り何とも不確定で有ります。

鈴木典生 / GLOBE -番人-
白花崗岩
一度この大地から切り離されたこの石は、長い間時空を彷徨っていました。やがて強い意志を宿し、この地に舞い降ります。その姿は38 個の球体から成る守り人になりました。

志賀政夫 / 風の色をみんなで眺める

ちょっとイスに腰を下ろし、風の色を眺めてみましょう。
昔の記憶がよみがえります。
木の葉のささやきが周りをおおいます。
風の色が通り過ぎるでしょう。

山﨑隆 / Welcome
白御影石
石を彫りすすめて作品の形が見えてきたとき、
自然とその作品の題名が浮かんできた。ウェルカム。

中村洋子 / 「蒼い空、薄雲よ。ひゅうら、ひゅうら、ツテン、テン。」
ステンレスメッシュ
こんもりした林。ひっそりとした木の幹に立ちはだかる蜘蛛。そし
て寄り添うように聴こえてくる、やしこばばの唄が。
「杢さん、これ、何?……」と小児が訊くと、真赤な鼻の頭を撫で
て、「綺麗な衣服だよう。」           泉鏡花『茸の舞姫』

大栗克博 / 俺の不知火型2013
灰色花崗岩
邪気を払い地を鎮める謂れのある横綱土俵入りを2013 年は二人の横綱がそろって不知火型でつとめている。これは大相撲史上初とのこと。両腕を左右いっぱいに伸ばしてせり上がる豪快さが特徴の不知火型、この思いをこの地とこの機に。

山本憲一 / 剪定季の風
ピンク御影石
剪定するをテーマに近年制作してきております。今回の作品では石を大きくくりぬき内側にすり込まれた割石の稜線と景観がどの様になるかと言う作品です。それと同時にこの場所に新緑の風が吹き込む願いも込めております。

齋藤徹 / 天壌2013
木、鉛、アクリル塗料
素材の持つ良いところを全て捨ててしまうような行為に、少しばかり疑問を持ちながらも続けてしまう。不毛な時間の連続で日々が刻まれて行く、こうやって数ヶ月過ごしてしまいました。

中井川由季 / あいまいな接合 木立の下に

「あいまいな接合」と名付けた作品を、形や大きさを微妙に変えながら昨年より作り足しています。一つ一つ似ているけれど違う形がゆるやかにつなぎ合わせてあり、その場所に合わせて自在に変えられるという作品です。今回は木立の下に百個ほどを.いで置きます。


小日向千秋 / 二重奏
漆、鉄線、他
風の中を舞い降りてきた二つの音色が、ひとときの居場所を見つけました。

高梨裕理 / 深い水II

林の中に入ってみる。木に出会う。そして見上げる。

齋藤さだむ / 不在の光景part II
写真
サリン( ざりがに) が死んだとき、娘は涙を抱えながら墓を造ったブラッキー( 男猫) はある事件の後からは僕を信頼し続けてくれたグレ( 女猫) は死んだ子猫を取り上げてから、僕を終始嫌ったジジ( 雄犬) は、妻がみとる中、壮絶な最後を遂げた。

平井一嘉 / サイセイキ
黒、赤、白御影石
手持ちの石と薬師堂前と自分との思いを巡らして、語呂合わせではあるが1 つは石臼を華と見立てて上から8-9-4( 薬師) 題名はサイセイキ( 再生機) ( 祭生機) ( 最盛期) ( 最性器) この地の変遷と個々の想いが廻るか体感してみたい。

海崎三郎 / 点在II

その小さく硬化した美しさに昔は気がつきもしなかった。

サトル・タカダ / 再生
ステンレス鋼、鉄骨、ウインチ、ワイヤー
卵の形体を生命の象徴として表現しました。池の中に設置したのは生命の源でもあり水面の光と割れ始めた卵が再生された“ 何か” が興味を見る人達に持たれる事でしょう。構造美とこの環境が彫刻の意味を深いものになれば良いと思います。

大島由起子 / たなごころ
黒御影石
神社のひっそりと落ち着いたこの空間に作品を潜ませたいと思った。少し、じっくりとゆるやかにこの様な場所で流れ続ける時間をみつめていたいという意識を憶えた。

栗原優子 / 閃光、瞬間落下
伊達冠石
遠くの雷鳴。
のちに、閃光。
夜を一瞬で朝に変え、かたちないものを突き刺して消えた。
朝は静かに夜へと戻ったが、刺さったなにかは消えなかった。

大槻孝之 / 行く雲

学生の頃の記憶ですが、足が泥の中に埋まって身動きが取れないけれど雲は行く、という万葉集の歌がありました。その人と雲との関係が美しく思え、それだけ覚えていました。私もこの里山の雲にその千年の気持ちを乗せてみたいと思いました。

渡辺治美 / Root (carrot)
御影石、真鍮
一見するとロケットに見える物体は地球から宇宙に伸びる“ 逆さの人参” である。その存在は無重力の空間において正常と言える。見方を替えれば“ 逆も真なり” とも言える。地に根を張り栄養たっぷりに育った根菜を、命を繋ぐエネルギー源と例え表現している。

岡本敦生 / 風になろうとしている
白御影石
以前展示した場所です。荒廃が進み、今や人の痕跡さえも消え去ろうとしています。一つの作品プランがあって敢えてこの場所を選んだのですが、道半ばにして長期入院せざるを得なくなりました・・・。

西成田洋子 / 記憶の領域2013 里に棲む
ミクストメディア
深海にまだ見ぬ生物がいるように、私たちを取り囲む緑にも息を潜めて存在するものがあるかもしれない。

藤島明範 / 分割された石1309-関係II
稲田石
二つに分割された石。 分けられた石どうしの関係。この関係を杉・檜の屋敷林の東端に置く。
この屋敷林と道に沿って「大池」と田んぼが広がる前方の広大な空間に、 私の石はどのような「関係」を結ぶことができるか。

井上雅之 / A-135
陶、鉄
押し潰されそうな真っ青な気圧の底に、小さく古い木造の蔵がありました。佇まいに惹かれ、ふわふわとした感触、手を離すとゆっくりと膨らみ、 もとに戻る緩い弾力を持った「形」を添えたいと思いました。しかし、しっかりと逞しく傍らに居合わせるように。

サクサベウシオ / 吊るされた石と鉄2013
自然石、鉄板、鉄パイプ、ステンレスワイヤー、鉄筋
日常生活の中で重い物といえば石や鉄を思いつくが、その石や鉄は地表にあって安定している物である。しかしそれらをひとたび吊るすか支えるかして空中に浮かせることよって、重力という自然の法則をビジュアルにそして美的に認識させたいのである。

山添潤 / 残像 -depth-
砂岩
森は揺れ動く大きな塊として僕の前にある。大地から切断された石が抱え込む記憶、そして僕が拘わったほんのわずかな時間が森の中で溶け合いひとつになって流れてゆく。様々なものが交錯する森が残す残像は如何なるものであろうか。

廣瀬光 / 凸と凹の形
白御影石
無限に繋がる形のひとつを取り出し、不要なところをできる限り削り落とす、ひとつの大きな結晶のような塊をつくりたい。

佐藤比南子 / Tension. 風を包む2
羊毛、ゴム紐、ピン
目に見えないものを包みたい。前回の展示(2011年3 月) の最中に地震があり、その後次々と起きたことの恐怖は今も尾を引いている。私はこの地で再び作品が創れる喜びを感じながら、この場所に流れる時間を包んでみたいと思っている。

島田忠幸 / 娑婆
アルミニウム
生物のようであり、または未確認飛行物体か薄気味悪い、そんな情況を型値として表したかった。
なんだかこの時代、予期せぬことが日常になったりする、怖さを感じる。

金沢健一 / 垂直線上の刻

数本の木に囲まれたこのひっそりとした場所を選んだのだが、この空間が何を欲しているか、読み解けないもどかしさがあった。おぼろげながらに場の中心点のような所を見つけた時に、時を刻むようにスリットを入れた鉄の角管を垂直に立ててみようと考えた。

村井進吾 / 黒体-13B
黒御影石
手入れの行き届いたこの小さな竹林に、異物を持ち込むと決めた時 からあるためらいは今も続いている。