「雨引の里と彫刻」と私

 雨引の里と彫刻との出会いは約10年前、大学の先生から展覧会の案内状を頂き、友人の家族と共に見に行ったことから始まりました。自宅の川越から、川越街道、浦所、首都高、外環、そして、常磐自動車道、北関東自動車道を乗り継ぎ走りました。桜川市に入り、見慣れない場所ということもあってか、随分、遠くに来た印象を持ちました。展示場所に着き作品を見た後、その日は、オープニングパーティーがありました。公園の中の傾斜を歩き、とても広いスペースに到着し、作家の方々が作った気持ちのこもったバーべキュウを御馳走になって、とても美味しい楽しい思い出となりました。2回目は、友人と見て回りました。林の中や屋敷の中などを回りながら雨引の自然の中で落ち着いた気分になりました。3回目は家族と自家用車で回りました。子供が作品の間から頭を入れて遊んでいたのを憶えています。良い思い出になりました。見た彫刻作品は、自然を背景にスケールの大きさを感じ迫力のある作品ばかりで、しかも、その空間に違和感と自然さ両方を持ち合わせた作品で「彫刻とはこう在るべき」と考えさせられました。


 様々な方から雨引の彫刻は作家が主体で運営するという話を聞き、また、桜川市の自然の中で堂々とした作品の展示が魅力的で、この展覧会に参加してみたいと感じていました。約3年前、思いきって雨引に参加されている大学時の恩師にフィールドでの作品展示に挑戦してみたいと相談したところ、少々の時を経て、推薦して頂くことに到りました。

 今年の3月から出品者、実行委員会メンバーとして、月に一度の展示に関わる会議に参加させて頂きました。会議、初参加の日、住まいを引っ越したこともあり、車で東北自動車道に入り北関東自動車道に乗り変え、到着まで約3時間掛かりました。インターを降りて走っていると改めて石材屋が沢山あることに驚かされました。公民館に到着し二階の会議室に入ると、とても広く、ぐるりとテーブルが置かれ、みんなの顔が見えるよう座った中、作家同士に距離がありながらも、一体感と解放感が漂っておりました。会議中、たくさんの意見が出て、展覧会に向う熱い気持ちを感じました。実際の展示場所のりんりんロードをメンバー全員で歩いたり、草刈りをしたり、パンフレットやポスターの郵送準備をする機会もあり、みんなで創り上げていくことを実感しました。
 
 今回の展示場所は、以前鉄道が通っていた場所です。作品のプランを練るために、また作品搬入のために、何回か展示場所に行きました。地元の方に旧雨引駅や樺穂駅にまつわる昔話を聞きながら、在ったものが無くなることを考え、アポリアについて考えさせられました。他界した父、故郷で生活している母、妻、我が子など家族のことを想い、雨引の里と彫刻との出会いは、私にとってかけがえのない時と場になりました。雨引の里と彫刻に作品展示の機会を頂き、桜川市市長をはじめ、市役所、市民のみなさま、関わった全ての方に感謝しております。

  参加作家 岡孝博