雨引の里と彫刻 2011 冬のさなか に参加した各作家の作品に対する思いや、制作に関して日頃考えている事、 雨引の里と彫刻に参加して感じた事など、それぞれの気持ちを綴った作家の一言です。

齋藤徹/アメ・ツチ(庭の様子)
花崗岩
通り過ぎてしまいそうな道端に、ぽっかりと空いた寒林。
誰が愛でるのか? 野の庭。
モノを配してどう変わる? 野の庭。

菅原二郎/内側のかたち -10LS-CARPA
石灰石
私の作品は四角い石の外側を極力残し、内側を自由な形で空間・量を作ろうとした。その意図は外側の幾何形態と表面及び内側の有機形態のバランスを求めた。手を加えてない部分に着色、彫った部分は素材の色で残し、そのバランスを強調しようと試みた。

國安孝昌/雨引く里の田守る竜神
丸太、陶ブロック、単管
北関東の冬の夕暮れは早い。幾日、ひとり低く赤い太陽を眺めたことだろう。零下30度に育った私には雨引の冬は優しく穏やかで親しげだ。私は、透明な空気のなか田畑を守る竜神をここに立てたいと思った。

高梨裕理/深い水

深い所から見上げてみた。

菅原隆彦/Vortex Form '2011

今回の作品は長さ5.5mの角鋼を数百本使い巻いて創りました。繰り返し巻く事により創られる絶妙な鉄の表情が気に入っています。1つの作品を創るのに時間がかかりますが、そうした過程の中で鉄の表情を感じとったりと、今までとは違った発見がありました。

山添潤/石の躯体V -塊物-
黒御影石
石を彫る その瞬間から石の存在は曖昧になってゆく 石は僕の力 を呑み込みながらその質量を徐々に減らす 力と時間が重なり合い 纏わりつく痕跡 やがてその集積が溢れ出し塊化してゆく 躯をもちはじめた石の確かな存在を感じたい。

金沢健一/オニムシの夢

この場所を見つけた時に、1人の女性が土を掘り返し、作業をしていた。何をしているのか尋ねると「オニムシがねえ」と。「オニムシ?」傍らに置いてあったバケツの中にはカブトムシの幼虫がてんこ盛りになっていた。この出来事が作品のモチーフとなった。

大栗克博/天空へ
灰色花崗岩
空の四方を隈なく見渡せる環境に仕事場を移したからか、また年齢からくるものなのか、空を見ている時間が長くなった。目線を上げ、雲の流れや赤く染まる夕焼、飛び交う鳥達などを見ていると、俺の石も少しだけ天空へ押し上げ、パァッと解き放してみたくなった。

島田忠幸/追うプリニウス・逃げるプリニウス
アルミニウム、木杭
闘争本能は、オスの旗印みたいなものだと思う。時代の価値観が入れ替わるたびに、先頭はめまぐるしく入れ替わる。敵を追っていたはずの自分が、その敵とされているのだ。グルグルと追い駆けっこが終わらない。

井上雅之/A-111
陶、鉄
風景を見ていると、何かもともとそこにあったと感じることがあります。それが自然のものか、人が作ったものであったのかを確かに言いあてることは叶いません。残された手がかりを頼りにしてかつての姿を探ってみました。少しばかり樹木の様でもありますが。

山本憲一/剪定季
白御影石
石の塊を「剪定」するをテーマに近年制作しております。「剪定」にはある意味合理的で理不尽な人間の知恵でもあり樹木や果樹の成長にならいなされます。今回の作品では石の割れ肌の表層を内側からたどり繊細さや温度を感じて頂ければと考えます。

中村ミナト/Tornado
アルミニウム
渦巻を見ていると、引き込まれそうな恐怖を感じます。たとえば渦潮や、竜巻や、人の渦、それらの大きなエネルギーを形にしました。

渡辺治美/Venus
花崗岩、アルミニウム
子供の頃から夜空を見ることが好きだった私。時空を超えて無限に広がる空間に旅したくなる。生命体としての自分の存在を知ることができるような気がして・・・。私と宙との距離を縮める乗り物であるロケットを形造る事によって、宇宙の旅人気分に夢を馳せる。

中井川由季/しゃがんで待つ

畑が連なる小高い場所に小さなビニールハウスを見つけた。それは以前、作物を実らせるために作られたが、今は使われていない。骨組みだけが残るハウスの中に、何かの訪れをじっと待っている形を置こうと決めた。冬の仕事は力を蓄えて待つことだ。

廣瀬光/crossroad
石、鉄
石を分割する鉄の板はそのまま作品が置かれた空間をも分割する、場所に直接かかわることで今まで見ていた風景にほんの少し緊張感が生まれる、存在する位置や時間によってイメージはさらに変化し、記憶の中の風景がまた交叉する。

横山飛鳥/光のあるところへ
木、大理石粉、自然光
冬から春へと向かういま、光は日に日にその強さを増し新しい季節の訪れを予感させる。早春の光を全身に感じながら、その先にある希望へとまっすぐに歩みを進めてゆく。この林に光が差し込むとき、その一瞬の光により作品は完成する。

松田文平/六方向の壁
黒御影石
地平を這う冬の太陽を、額で受け止めるがごとく。

大島由起子/気になる木
本小松石
気になることを
器に満たして
木に生らしてみたら
気にならなくなった。

中村洋子/鳥はその時飛びたったよ、ベルックさぁーん。
木、ステンレスメッシュ
桜の木の下、あずまやにある大きな鳥カゴ。誰のものかと思うけどそんなことはどうでもいい。ただ、さっき鳥が飛びたったのを見ただけだ。今あるのはそのまんまの鳥カゴと私。何もなかったかのように佇んでいる。

山崎隆/低い冬
黒御影石
犬と散歩をしていると普段より目線が下を向くせいでしょうか、色々と気づかされることがあります。冬の地表にはタンポポやノゲシが低く円形にその葉を広げています。作品「低い冬」ではそんな冬の植物たちからイメージをもらい、石の形としてみました。

岡本敦生/forest 2011 - Planet
黒御影玉石
削岩機(ドリル)で石に穴を開けていきます。それぞれの穴は、石の中心で繋がっていきます。惑星の一部だった硬い石は、穴が貫通する度ごとに、段々と呼吸を始めます。その硬い石の中で生き返った森のカタチを、ひたすら発掘するのです。

金子稜威雄/私は逆立ちする
木材、プラスチック、鉄
逆立ちの苦手な人に逆立ちしてもらうための作品です。両腕を上に伸ばし、天井を支えるように立ってください。写真も撮れるように覗き窓をつけました。

鈴木典生/寒花
白御影石
淋し気に一本の桜の木がある。その周りに作品を置きたいと思った。桜の木とこの作品は無言の会話を交わせるのでしょうか。私は桜の木と作品の姿を想い浮べます。冬時の青空の下...雨の日...曇りの日...
私が一番見たいのは雪が降り積もった姿です。

齋藤さだむ/観覧車
写真
観覧車には、特別な思いを私は感じている。遠方からはランドマークの役割を果して、ゴンドラに乗れば外界を眺める装置となる。ゆっくり回転しながら上り始めると気分はすこしづつ高揚して、下り始めればそこはかとない儚さを感じさせるのである。

志賀政夫/Black box は風の色
陶、鉄、ステンレス・スチール、木
この黒い箱は、「風の色」を作る装置です。
あなたは、何色の風が好きですか。
隙間から覗き込み、上から眺めて、「風の色」を見つけて下さい。
あなたの「風の色」が、きっと見つかるはずです。

大槻孝之/重力の森

「そして林は、虔十のいたときのとおり、雨が降ってはすきとおる冷たいしずくをみじかい草にポタリポタリと落とし、お日さまが輝いては、新しいきれいな空気をさわやかにはき出すのでした。」宮沢賢治『虔十公園林』より。林へのオマージュとした作品です。

佐藤比南子/Tension. 風を包む
羊毛、ゴム紐、ピン
羊毛の繊維が絡みあい、広がって、まるで細胞が増殖するように一枚の布になる。やわらかく形のない布は、壷を包めば壷の形に、身体を包めば身体の形になる。何にでもなる可能性があるこの布を、引っ張り、ねじり、結んで、雨引の里の「風」を包んでみたい。

戸田裕介/雲烟過眼(うんえん・かがん)/ 枝宮のための篝(かがり)
鉄、サイザル麻ロープ、オイルステイン、塗料
高久神社の境内をよく見ると大小様々な摂末社がある。いずれかに地主神も祀られているはずだが、今では一つとして建立の時期も由来も判らないと聞いた。まして、私がここに彫刻を作った事など人の記憶からすぐに消え去るだろう。儚く尊い今を共有したい。

和田政幸/Big roll paper

一昨年、トイレットペーパーの形を拡大して画廊で発表しました。その形をもっと大きく、比率を変え作りました。隣の池には夏一面に蓮の花が咲きます。空と林とロールペーパーあまり関係ありませんが、並んだ粗大ゴミと云う様でしょうか。

佐藤晃/循環 -外延と内包量
白花崗岩
石の塊を割り、外から内、内から外へと彫り込んで行く。再び構築した形の内側には、空洞が生まれる。石の襞の間に、澄んだ冬の光や空気が巡りはじめる。

田中毅/水守
黒御影石
最近、沼の近くで制作しているのを機に、水をイメージした作品を作ってみた。制作している内、自刻像を彫ってるように感じて来た。見通しが良いように、心の窓を開けてみた。

塩谷良太/Ceramic Cylinder for Images of Water Level
陶,鉄
扇沼のわきの林の中に6本の陶の筒を立てました。筒は内側の水平面に水位によってあるイメージを形づくります。例えば筒の1つは上から、<円、ホワイト・マウンテン・サクシフリジ、舞子横顔、人胎児4週、耳、かたつむり、レール断面>となっています。

藤島明範/月臨環(がちりんかん)1101 -瞑想のトンネルII-
稲田石
とてもよく手入れされたクヌギの林である。
分け入って木々の間を散策すると、妙に懐かしさがこみ上げてくる。
この懐かしさはいったい何なのだろう。
私は遠い記憶をたどるために、瞑想のトンネルを置くことにした。

宮沢泉/形象
花崗岩
目前の塊にひたすら鑿を当てハンマーで打ち削る作業です。一打ち一打ち僅かな石片しか削れません。こんなことで何になるのか、何ができるのだろうか。けれどじっくり根気よく繰り返し鑿を打ち続けていくうちに石が何かを帯びていくように感じる時があります。

小日向千秋/風天
漆、鉄、麻布、他
木立の中に風が舞い降り、また立ち去ってゆく。寒さにふるえる木々や鳥たちは、まるで何事もなかったかのように素知らぬ顔をしているけれど、通り過ぎる風の痕跡はいつも新しい風景を描き続けているのだ。

望月久也/reflections
ステンレススティール
折々の陽の運行は、つきつめれば地球の自転と公転という、2つの回転運動の結果で、輝きや陰影というものもその差す角度に因っています。そのような「陽光の移ろい」をイメージしてみました。

山上れい/Triangulated Circle
ステンレススティール
高い空から木立の奥深くまで光が差し込み、足下の落ち葉を照らす。生い茂った緑に阻まれて夏には届かなかった光が、林の隅々まで行き渡る。冬の雑木林は光に満ちていた。ステンレスの円環を設置することで、光を強くはっきりと感じたい。

海崎三郎/雨引

自立と依存のはざまで立つ地中と地上をつなぐ一本の線。以前にはなぜか実現できなかったがもう一度作りたくなった。一月の雨引に山の神が降りてくる。翌日、朝もやの中で見た御神木はあぜ道の脇に立っていて、言いようもなく気高く美しかった。あの焦げた斜めの木が背中を押してくれた。

村井進吾/黒体 1101
黒御影石
地表、1.29mの圏界面。

西成田洋子/記憶の領域2011-F00
衣服、靴、カバン、コード、針金 等
かつて近隣の人々でにぎわったであろう建物の一隅。いまは落ち葉が降りしきり、やがてしーんと静まりかえった冬を迎える。そこに佇ずむ一つの生命体。いったい何者だろう?

槇 渉/アマビキドン
白御影石
見えないものが見えてくる、現われては消えてゆく、人はそれを幾度となく経験する。長い時間と力で熟成されて現出するものは、消滅の時も多くの光の欠片を残す。そして新たなアマビキが生まれる。