あいさつ


photograph SAITO Sadamu


 茨城県中西部に位置する石材業と農業の盛んなこの村で、7人から始められた展覧会も今回で五回目を迎えました。約八年の間に季節を変えて展覧会を開き、気が付けば参加作家は45人にもなっていました。月に一度の会議や参加費、もちろん制作に係わるすべてを負担しながらも、参加作家が増えていくのは、この展覧会が持つ力に引き寄せられて、魅せられてしまうからなのでしょうか。
 自らが選んだ場所に作品を置き、季節が変わりゆく様を観察する。道行く人と会釈を交わし、短い会話をする。それらは、美術館やギャラリーでは味わえない体験です。また、数々ある集まりの中で、ある時は作家同士、互いの作品について批評し合い、美術について、あるいはこの展覧会について意見を戦わせる。それもまた、参加する楽しみでもあり、気概でもあります。
 参加しているそれぞれが、美術の現状や、社会について大上段からものを言ったり、斜に構えて批評したりすることなく、今の自分と、眼の前にある自然に、寡黙に正面から向き合いながら、場と係わって行く。暮らしが隅々まで刻まれた里山には、大仰な構えや小手先の仕事が通用しない。毎回、この現実の中で、それぞれが試されているように感じています。
 小さな村での八年の試みが残したその足跡と、これからの歩数のゆくえを、自らの足元を確認しながら、この先も追ってゆきたいと思います。

2003年10月31日
雨引の里と彫刻 実行委員会
中井川由季