金沢健一


 
工業製品としての金属を素材に、幾何学的な形態による構成的な作品、またそれと並行して、不定形に熔断した鉄板から音を発見する
《音のかけら》、振動の物理現象であるクラドニ図形を利用した《振動態》など視覚、聴覚、触覚を結びつける作品を制作する。
多くの美術館で展覧会、パフォーマンス、ワークショップを展開している。

略歴
1956  東京都生まれ

1979 東京藝術大学美術学部工芸科鍛金専攻卒業

1981  東京藝術大学大学院美術研究科修了

           現在、多摩美術大学非常勤講師、東北芸術工科大学非常勤講師

受賞歴
1979 東京藝術大学安宅賞 ('81) 

1981 「第3回ジャパンエンバ賞美術展」国立国際美術館賞

1982 「第14回日本国際美術展」東京都美術館賞

1998 「第1回岡本太郎現代芸術大賞展」準大賞

2003 「第20回記念 現代日本彫刻展」毎日新聞社賞、市民賞

主な個展
1982   ギャラリー山口/東京 ('84,'85)

1986 ギャラリーなつか/東京 ('88,90,92,'93,'95,'97,'99',02',05,'08,'13)

1997   「音のかけら展」 こどもの城/東京

2000   「ラボラトリィ2 共鳴する空間 金沢健一 音のかけら」 新潟市新津美術館

2002   「はがねの変相-金沢健一の仕事」 川崎市岡本太郎美術館/神奈川

2005  慶応義塾大学日吉キャンパス来往舎現代藝術展2「金沢健一 響きの庭 ―目で聴く音、耳で見る形―」/神奈川

2006   「金沢健一「音のかけら」とワークショップ展」 川越市立美術館市民ギャラリー/埼玉('07,'08,'09,10)

2011 「〈川越の美術家たち〉金沢健一展― 出発点としての鉄1982-2011」川越市立美術館 /埼玉

2012 「音のかけらと音楽のかたち 2012」 川越市立美術館アートホール/埼玉(’13)

2013 「金沢健一展 自由になるための規則と偶然」 ギャラリー揺/京都

2014 「Vibratile Shape 2014  振動という現象」 川越市立美術館アートホール/埼玉

2015 「金沢健一展 記憶の層としての構造 あるいは建築のような」 いりや画廊/東京

主なグループ展
1981  「第3回ジャパンエンバ美術展」 エンバ中国近代美術館/兵庫 ('82,'83)

1982   「第14回日本国際美術展」 東京都美術館、京都市美術館 ('84)

1987   「サウンドガーデン」 ストライプハウス美術館/東京 ('88,'90,'92,'94)

1989   「第9回ハラアニュアル」 原美術館/東京

1991  「ねりまの美術'91ー彫刻の現在」 練馬区立美術館/東京 

1992   「語り出す鉄たちー今日の金属彫刻から」 東京都美術館

1997  「古川知泉・金沢健一-紡ぐ人・構成する人」 板橋区立美術館/東京

1998  「岡本太郎と岡本太郎現代芸術大賞展」 ワタリウム美術館/東京

2000   「知覚するかたち」 福井県立美術館

2001  「第4回雨引の里と彫刻」 真壁郡大和村/茨城 ('03,'06’,08,’11)

          「life/art '01」 資生堂ギャラリー/東京 ('02,'03,'04,'05)

2003  「第20回記念 現代日本彫刻展」 宇部市野外彫刻美術館/山口

2005 春のアーティスト・イン・レジデンス「手と目と耳の先へ」国際芸術センター青森

        「もうひとつの楽園 Alternative Paradise」金沢21世紀美術館/石川

2008 「音に恋した美術展」安曇野市豊科近代美術館/長野 唐津市近代図書館/佐賀 釧路市立美術館/北海道

2011 「耳をすまして―美術と音楽の交差点」茨城県近代美術館 

2013 「自画自讃―新たな物語づくりのために」東京アートミュージアム、プラザギャラリー/東京

2014 「メタルズ! 変容する金属の美」高岡市美術館/富山、碧南市藤井逹吉現代美術館/愛知、新潟市新津美術館

 主なコレクション   
国立国際美術館、東京都現代美術館、原美術館ARC、板橋区立美術館、愛知県児童総合センター、
静岡県立美術館、資生堂アートハウス、北海道立近代美術館、川越市立美術館、宇部市野外彫刻美術館、
高松市美術館


雨引の里と彫刻 2015




Bookends

22.5×30×31.6 (h)cm ×12(p)


ある造形規則の基に同サイズの鉄板4枚を重ねた形態。

そのすべてのヴァリエーション12点を樺穂駅跡のプラットホームに一列に並置した。
「Bookends」と題し、それらの造形に新たな意味を見いだしてみたい。
かつてそこにあった駅や人のことなど。



雨引の里と彫刻 2013




垂直線上の刻

15×15×360 (h)cm ×2pieces


木々に囲まれたこのひっそりとした空間をどう把握したらよいだろうか。
時の刻みのように溝を入れた2本の鉄の角管をある距離をおいて垂直に立てる。
2つの垂直軸の空間関係に此方と彼方の時の隔たりの感覚が生まれる。
最小限の表現で場の把握と異化を試みた。



雨引の里と彫刻 2011  冬のさなかに




オニムシの夢

[90-120]×[90-120]×[50-60] (h)cm ×6pieces


1人の女性が土を掘り返し、作業をしていた。何をしているのか尋ねると「オニムシがねえ」と。
「オニムシ?」傍らに置いてあったバケツの中を覗くと、カブトムシの白く透明な幼虫がてんこ盛りになっていた。
私はドキッとした。思春期の少年の性器のようなエロチシズムを感じたのだ。
落ち葉の積もったこの場所は、幼虫にとって、心地良い温かな寝床なのである。
この出来事が今回の作品のモチーフとなった。



雨引の里と彫刻 2008




動きの生成

1,800×20×20 (h)cm


林の中にたたずみ、樹々の垂直性や形態に対し、 水平に地面に這う形態、鉄が作り出す形態を考える。
鉄の角管に溝をいれることで工業製品としての 無機的な直線から有機的な曲線が生まれる。
林の中で、その鉄がどのような存在感を示すのか、 一本の山桜に向かってその曲線を走らせてみる。



雨引の里と彫刻 2006




音のかけら-無人駅にて
鉄、ゴム、ウレタンフォーム、木の実
186(φ)×71.5 (h)cm /Table
47.1×45×85 (h)cm ×4pieces/Chair


殺風景な無人駅の待ち合いには誰もいなかった。
列車を待つ間、自分の足音と息づかいだけが空しく響いていた。
待ち合いの機能を持たせながら、人の気配を暗示させる物と音がほしいと思った。
それは音を鳴らすことができるテーブルと椅子となり、この駅の待ち合いに集まる人々とのコミュニケーションを持つこととなった。



第5回 雨引の里と彫刻




3(あるいは木の上の小さな家のような)
アルミニウム、ステンレススティール
15~20×15~30×10(h)cm (×60P)
0.47kg (1P)



畦道を抜け、雑木林の中に入ると、どこまでも続くような奇妙な感覚に襲われた。木々に囲まれながら、恐いもの見たさのように、さらに奥深く林の中を行く自分がいた。アルミニウムの角パイプ3個で構成した形態のバリエーション60点をそれぞれ木々に点在させた。林を巡り、林の木々と対話をするために。それは木の上の小さな家のようになった。


第4回 雨引の里と彫刻




竹と鉄の間に
鉄 Steel
12.5~31.25×25~37.5×250 cm(×9P)
90 kg(×9P)



昨年の夏の午後、この奥深い竹林を発見した時の驚きは今も忘れない。竹林の中を巡り、そして時折、上から降りそそぐ光と凛とした空気の中に、しばらくの間、身を置いてみる。 この竹林に3本の鉄の角管で構成された柱状の形態を9基たてる。それは、竹林の中に自分の身を置く所作に似ていて、竹林を巡る時間と空間の中に僕の造形と素材である鉄の意志が見え隠れする。